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甲状腺とは
甲状腺とは、人間が生きていくのに必要なホルモンを作り、分泌する臓器です。甲状腺の異常による病気は、全身に様々な症状が現れるため、原因が特定しづらいのが特徴です。
甲状腺の病気は女性、それも20代から50代の女性に非常に多い病気です。
なぜ多いのかはよくわかっていませんが、バセドウ病や橋本病はそれぞれ甲状腺自己抗体が原因の自己免疫疾患のひとつです。一般的に、自己免疫疾患は女性に多い事が知られています。
甲状腺ホルモンとは
甲状腺ホルモンとは、甲状腺から分泌され、全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きをもつものです。
この甲状腺ホルモンの分泌量が極端に多くなったり、少なくなったりすることで病気になるケースがあります。
甲状腺疾患の食事について
甲状腺の病気になったとしても、特に食べてはいけないものはありません。
ただし、甲状腺機能低下症の場合、海藻類などヨードを含む食品の食べ過ぎには注意が必要です。
ヨードは甲状腺ホルモンの材料ですが、甲状腺機能低下症の場合、摂り過ぎると、逆に甲状腺の機能が低下してしまう恐れがあります。
甲状腺の病気の種類
甲状腺の病気にはたくさんの種類がありますが、大きく分けると以下の3つになります。
甲状腺機能亢進症(血液中の甲状腺ホルモンが多すぎる病気)
バセドウ病、無痛性甲状腺炎など
いろいろな原因で甲状腺ホルモンの分泌が増えて、体の新陳代謝を必要以上に高め、活発になりすぎる甲状腺の病気です。
症状としては、年中暑がり汗が出て体が怠い状態になります。更年期障害などと間違われやすい病気です。中でも、一番多い病気はバセドウ病といわれています。
他には、甲状腺組織が破壊されて、一過性に甲状腺に貯められていたホルモンが血中に流れ出る無痛性甲状腺炎や、高熱が出て甲状腺部位が痛む亜急性甲状腺炎、ホルモンを分泌する腫瘍ができる甲状腺機能性結節などがあります。
甲状腺機能低下症(血液中の甲状腺ホルモンが少なすぎる病気)
橋本病、粘液水腫など
逆に甲状腺の機能が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが少なくなる甲状腺の病気のことです。
身体が冷えたり、乾燥肌、無気力でいつも眠い、もの忘れが激しくなる、受け答えに間があったりゆっくりになるなどの症状が出るため、怠け者やうつ病と間違われる事もあります。
ほとんどの場合、甲状腺に慢性の炎症がある橋本病といわれるものですが、血液中の甲状腺ホルモンが正常の範囲内にあり、甲状腺の腫れが少ない橋本病の場合は、とくに治療の必要はありません。
又、特発性粘液水腫といって、甲状腺が破壊され萎縮してしまい、甲状腺ホルモンを作る量が極端に少なくなってしまう病気などもあります。
結節性甲状腺腫(甲状腺の臓器内に腫瘤ができる病気)
濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、甲状腺悪性腫瘍など
甲状腺腫瘤ができる疾患です。甲状腺腫瘤の多くは、甲状腺機能には影響しないので、体調や精神状態に大きな影響がでることはありませんが、良性のものと悪性のものがあります。
*良性のもの→甲状腺濾胞腺腫と、腫瘤が多くできる腺腫様甲状腺腫と、甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺機能性結節
*悪性のもの→乳頭癌、濾胞癌、低分化癌、未分化癌、髄様癌、悪性リンパ腫など6種類に分けられています。
甲状腺の病気 男性 女性
甲状腺の病気は、約5対1の割合で女性の割合が多いです。これは男性が甲状腺の病気にならないということではありません。
いくつかの統計によると、甲状腺結節を生じた男性の50%は甲状腺がんです。
男性に甲状腺がんが生じる理由は、普通は特発性で原因がわかりません。残りの男性甲状腺疾患患者はバセドウ病から橋本甲状腺炎まで、ありとあらゆる種類の病気に罹ります。
ストレスも、バセドウ病や橋本病のようなある種の自己免疫性甲状腺疾患の発病のきっかけとなり、様々な理由で男性は女性よりはるかにストレスを感じやすくなっていますが、それは、社会的なストレスがかかることが多いからです。
さらに、男性は女性に比べて自分の感じていることを表に出そうとしません。この種のストレスは、甲状腺疾患については健康診断の際に検査対象にならないこともあり、甲状腺疾患の家族歴がある方は、定期的に甲状腺機能検査をしてもらうようにするようにした方がよいでしょう。
症状とチェック方法
日常生活の中で誰もが一度は経験したことがありすぐに良くなれば問題ありませんが、以下のような症状が数ヶ月以上続いている場合は甲状腺の病気かもしれません。
- 心臓がドキドキする
- たくさん汗をかく
- 手がふるえる
- 体重が減る
- 目が出る
- 疲れやすい
- イライラする
- 落ち着きがない
- 極度の暑がり
- 下痢
- たくさん食べても太らない
- 髪が抜ける
- からだがだるい
- やる気がでない
- 体重がふえる
- 首が腫れる
- のどに違和感がある
- 極度の寒がり
- 肌が乾燥する
- からだがかゆい
- からだがむくむ
- 便秘
- 昼間も眠い
- 生理不順
- 首にしこりがある
- からだが重い
- 不妊
このような症状があり、治療を受けていても症状が治らない方は、甲状腺の検査を受けることをお勧めします。
甲状腺の病気 初期症状
甲状腺ホルモンが体内で多くなると
〔動悸〕〔息切れ〕〔汗の増加〕〔体重減少〕〔手の震え〕〔全身の倦怠感〕〔暑さに耐えられない〕といった症状が出ます。
甲状腺ホルモンが多すぎて症状が出るものを甲状腺中毒症と言います。その中で甲状腺が働きすぎて必要以上に甲状腺ホルモンを作っている状態が甲状腺機能亢進症です。
治療薬として、チアマゾールとプロピルチオウラシルの2種類があります。
抗甲状腺薬は、消化管から吸収されて血液中に移行し、甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモンの生合成を抑制する作用があります。
甲状腺ホルモンが不足すると
〔むくみ〕〔寒がり〕〔便秘〕〔皮膚のかさつき〕〔集中力の低下〕〔脱毛〕などの症状がでます。
徐々に症状がでてくるため、甲状腺の病気だと分かりにくいです。
年配の方では認知症のような症状と間違われたり、むくみは腎臓や心臓の病気と間違われたりすることもあります。
治療薬としてチラーヂンS、レボチロキシンナトリウム錠などがあり、これらの甲状腺ホルモン薬は、橋本病、甲状腺手術後及び治療後に起こる、甲状腺機能低下症の甲状腺ホルモン補充に用いられます。
甲状腺 バセドウ病 治る?
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる状態である甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気です。
特に女性に多い病気であり、男女の比率は男性1人に対して女性5~6人程度です。甲状腺の病気のなかでは比較的男性の比率が高い病気で、20~50歳代の方に発症することが多く、中でも30~40歳代の方の発症が最も多いです。
バセドウ病の薬物治療
薬だけでバセドウ病を治そうとすれば通常は3〜5年程度は薬を続けることになり、服薬を続けている限りは1〜3月毎に血液検査を受けなければなりません。
長期間の内服治療により一部の人では薬を止めてもホルモンが増えない状態になりますが、永い期間治療しても結局いつになっても薬が止められないこともよくあります。
バセドウ病の手術による治療
甲状腺の一部を残して大部分の甲状腺を手術により切除します。
入院期間は普通は2週間以内です。手術直後の数ヶ月から約1年までは甲状腺機能が低下気味に経過しますが、その時期を過ぎれば90%近くの人は薬なしで甲状腺機能正常の状態に戻りますが、別の約5〜6%の人は甲状腺機能低下症になり、約6〜7%の人ではバセドウ病が再発することもあります。
しかし、ほとんどは半年以内に治ります。
また7〜8%の人で手術直後に血液中のカルシウムが減り手足のしびれが起こることがありますが、これも短期間の薬物治療で治ることがほとんどです。
手術治療の良い点は早く高い確率でバセドウ病を治せることです。